神聖であるべき科学の領域が侵されている。
問題をまとめてみれば、次図のようになる。メーカーと大学の癒着の上に胡坐をかく許認可行政。論文作成はメーカーにとって広告効果、研究者にとっては学会発表、学位論文のために、また研究費の援助を受ける口実として大きなメリットを生むものである。結果として、産学官による「ドラッグラグ大国」の創出、国民は高額医療費の負担を強いられる結果となる。
毎日新聞は以下の記事を特集する。
臨床試験疑惑 主論文も改ざん疑い ノ社立件も視野2014年06月12日
- 臨床試験のデータを2009年の試験終了直後に受け取っていた
- これを基に執筆されたバルサルタン[1]に関する同大の主論文もデータ改ざんが指摘されており、
- 脳卒中などについてバルサルタンに有利な結果が出るようにデータを操作した図表を研究者に提供。
- バルサルタンに脳卒中や心疾患の発症を抑える効果があるなどとしていた。
- 白橋容疑者は自身で統計解析し、作成した図表を研究チームに提供。これを基に主論文が執筆された。
偽りの薬:バルサルタン事件/上(その1) 「彼は研究者側の先生」2014年06月12日
- 医師らが集まる勉強会で統計の講義を任されるほど信頼を獲得、京都府立医大を含む5大学でバルサルタンの臨床研究に関わった。ノ社の元幹部は白橋容疑者を「会社よりも、向こう(研究者)側にいる『先生』」と説明した。
- バルサルタンの売り上げは2000年の発売から累計1兆2000億円を突破、白橋容疑者は09年に社長賞を受賞した。
- だが、毎日新聞が昨年3月に疑惑を報じたことをきっかけに、ノ社は昨年5月に「社員の試験への関与は不適切だった」と謝罪に追い込まれる。直前にノ社を退社した白橋容疑者は、知人に「会社に裏切られた」と漏らした。
偽りの薬:バルサルタン事件/上(その2止) 組織の関与ないのか 疑念、一層深く2014年06月12日
- 今年1月9日、同省はノバルティスファーマ社と「氏名不詳」の個人を薬事法違反容疑で刑事告発した。
- 厚労省は告発しながら、カルテのような基本的な資料すら集めていなかったためだ。
- 100人以上の関係者から事情を聴き、白橋容疑者による故意の改ざんの疑いがあることを突き止めていった。
- 京都府立医大には、ノ社側から3億円を超える「奨学寄付金」が提供されていた。事件の背景に「薬とカネ」の疑惑がつきまとう。
- バルサルタンの臨床試験疑惑に、東京地検特捜部の捜査のメスが入った。
バルサルタン:臨床試験疑惑 ノ社、のらりくらり 厚労省指示で一転協力2014年06月12日
- 「我々は試験に直接関与できない。社員の試験への関与は全くのゼロだ」。府立医大の論文の一つが撤回された昨年2月。三谷宏幸社長(当時)は定例の記者会見で、記者からノ社の試験への関与を問われた際、淡々とした口調でこう全面否定した。
- 昨年5月。「社員が加わっていたことが臨床試験に疑念を生じさせてしまい、不適切だった」と初めて非を認めた。さらに、昨年7月には全面的に試験をバックアップしていた事実をようやく認めた。
- 厚生労働省が昨年7月、ノ社に各大学の調査活動に積極的に協力するよう強く求めると、ノ社はようやく白橋容疑者に協力を促した。
- 世界最大、製薬グループ
ノバルティスファーマ(東京都港区)は、スイスに本社を置く世界最大手の製薬会社ノバルティスグループの中核を担う医療用医薬品部門の日本法人。循環器やがん、呼吸器などの医薬品を扱い、2013年の売上高は約3260億円。社員数は約4500人(今年1月時点)。バルサルタン[2]臨床試験などの不祥事を受け、今年4月に日本人幹部3人が更迭された。ノバルティスグループは世界140カ国以上で製品を販売し、米調査会社によると、昨年の医療用医薬品の売上高505億ドル(5兆1510億円)は世界首位。
クローズアップ2014:ノバルティス元社員逮捕 虚偽広告で異例の立件 脳卒中データに着目2014年06月12日
- だが特捜部は、一般的に評価が定まっていない脳卒中予防の効果についてデータを改ざんし、ないものをあるように記述した行為に着目。明らかな虚偽だと判断した。
- 広告担当者と白橋容疑者の共謀を立証するにはハードルも高く、検察関係者の間にも「立件は難しい」との見方もあった。
- 特に統計解析は研究の根幹といえるが、国内では医学分野の統計解析に通じた専門家が不足しているのが現状だ。白橋容疑者が研究の根幹部分に関与できた背景には、臨床試験に必要な人材の不足という日本の医学界の弱点があった。
- 白橋容疑者が関与したのは統計解析だけではない。試験の進め方の相談や図表類の作成、研究者の会議の書類作りなど、幅広く関わっていたことが大学やノ社の調査で明らかになっている。
- 日本学術会議は今年3月、人材育成を含めた臨床試験の支援態勢を早急に整備すべきだと各研究機関に提言した。業界団体「日本製薬工業協会」は4月、自社製品を使う臨床試験に奨学寄付金を提供することや、社員がデータ解析などに関わることを禁止する通知を出した。だが強制力は無く、どこまで徹底されるのかを見定める必要がある。

日経新聞の記事でノバルティスの過去を追ってみる。
製薬の未来は経費削減でなく研究開発にある2014/4/24 14:05
- 前者の案件では、抗がん剤やワクチンの研究開発(R&D)に多額を投資する両社が大規模な合併をせずに、それぞれが最も得意な分野に特化する方法を見つけた。後者の案件では、現金をため込んで米証券業界の高評価を狙って研究開発費を削減しながら、にきびや水虫の新たな治療薬が生み出されている。
- 製薬業界ではこれまでにいくつもの企業合併がありながら、生産性が下がり、利益は減少している。
- 資金を借り入れてほかの会社を買収することによって新たな製品となる医薬品を得たバリアントは08年以降、87億ドルで昨年買収したコンタクトレンズ大手の米ボシュロムを含め、35社を超える会社を手に入れてきた。
- 製薬業界の選択肢の1つは、企業が得意分野に集中するための事業交換を進め、必要な分野で研究開発を強化することだ。もうひとつの選択肢は、近視眼的なヘッジファンドの支援を受け、コスト削減に努めることだ。《事業交換で専門を強化》か、《コスト削減で利益拡大》かこれは企業倫理に関わる選択の問題である。
ノバルティス社の降圧剤研究で論文撤回勧告 千葉大2014/4/24 14:05
- 千葉大は25日、ノバルティスファーマ(東京)の降圧剤ディオバン(一般名バルサルタン)を使った同大学の臨床研究について、論文の著者らに撤回を勧告すると発表した。
- ディオバンに心臓や腎臓を保護する効果があるとした研究結果の一部が否定された。
- 「データを元社員に渡し、解析と図の作成をしてもらった」と翻した。元社員は統計解析への関与を否定したという。
- ディオバンをめぐっては、京都府立医大や東京慈恵医大など計5大学の臨床研究で問題が指摘された。
ノバルティス、重い副作用10例報告せず 薬事法違反の疑い2014/4/24
- ノバルティスファーマ(東京)が、白血病治療薬の重い副作用10例を把握しながら、薬事法に基づく国への報告をしていなかった
- ノ社の白血病治療薬を巡っては、東京大病院を中心とした臨床研究でも、社員の不適切な関与が判明している。
社員の研究関与、新たに4件 ノバルティス社外調査委2014/5/19
- 2010年~12年に東京大病院などで始まった4件の臨床研究について、研究計画書や患者アンケートの作成に同社社員が関わり、アンケートの回収・運搬も担っていた。
- データの改ざんなどは無く「研究結果が不当にゆがめられたとは認められなかった」としている。
副作用、新たに1万症例 ノバルティス社 報告漏れを調査2014/06/10
- 社内の安全性評価部門に約1万例が提出されていなかったと推定されるという。
- 薬事法では、重い副作用を把握してから15日または30日以内の報告が義務付けられている。ノ社の社内規定では、営業担当社員が副作用情報を把握した場合、24時間以内に安全性評価部門に報告することになっている。
研究「丸抱え」背景に 薬効高く見せかけ ノバルティス元社員逮捕
2014/06/11
- 一連の臨床研究が同社の「丸抱え」で進んだことが不正の背景として指摘されており、組織的な関与の有無が今後の捜査の焦点になる。
- 京都府立医大の研究チームは高血圧患者のデータを基に「ディオバンが他の降圧剤より脳卒中や狭心症を減らせる」との論文を発表。他の大学もディオバンの効果を認める結論を出した。ノバルティスは研究論文を引用してディオバンの広告記事を掲載し、販促活動に利用していた。
- 京都府立医大側は12年に論文を撤回し、府立医大の調査委員会は「研究データに操作があった」と結論付けた。
- ノバルティスを巡っては、今年に入りディオバンの臨床研究以外にも不正や疑惑が浮上。東京大病院を中心とした白血病治療薬の臨床研究では、同社社員が患者アンケートを運搬して個人情報を入手していたことなどが判明した。
臨床研究の不正、後絶たず 医師・企業の癒着 背景 厚労省、罰則伴う法規制探る2014/06/12
- 大学研究者である医師と製薬会社の癒着が指摘されている。
- 武田薬品工業が3月、高血圧症治療薬の広告で5月には貧血治療薬の臨床研究で、協和発酵キリンの社員が患者の個人情報を入手で、
- 薬の効果を権威付けるため、医師に裏付けとなる論文を書いてもらうことを求める。一方医師側は、寄付金や社員が研究を手伝う労務提供を企業に期待する。
業者から直接データ 元社員、口裏合わせ依頼 ノバルティス事件 大学ずさん、改ざん招く?2014/06/12
- 大学研究者である医師と製薬会社の癒着が指摘されている。
- 武田薬品工業が3月、高血圧症治療薬の広告で5月には貧血治療薬の臨床研究で、協和発酵キリンの社員が患者の個人情報を入手で、
- 薬の効果を権威付けるため、医師に裏付けとなる論文を書いてもらうことを求める。一方医師側は、寄付金や社員が研究を手伝う労務提供を企業に期待する。
- 研究データの管理業者から基礎的な統計データを直接入手していた
解析用パソコンを廃棄 ノバルティス元社員、関与隠す? 2014/06/12
- 高血圧症治療薬ディオバン(一般名バルサルタン)の臨床研究を巡り、京都府立医大など5つの大学でデータ解析を担当した。
- 07年以降に各大学がディオバンは高血圧症以外にも効果があるとの結論をまとめた論文を公表した
- その後、論文に不正の疑惑が持ち上がったことで12年末に京都府立医大の論文が撤回され、大学側や厚生労働省が調査に着手。白橋容疑者に対するヒアリングも行われた
- 既存の治療薬と比べて脳卒中や狭心症の発症を抑える効果があるなどと宣伝していた。
研究者に代わり資料作成 容疑の元社員 ノバルティス事件、担当外の会議出席 チェック機能働かず?2014/06/13
- データ解析の担当者としての役割を超え、研究者に代わって会議資料の作成なども行っていたという。
- 臨床研究では客観性を確保するため、統計解析の担当者は他の業務に関わらないことが求められる。
- 研究チーム内でチェック機能が十分働いていなかったことがデータ改ざんの一因になったとみて、実態解明を進めている。
- 研究計画では、白橋容疑者はこうした委員会には入らず、データ解析を専門に手掛ける担当者として研究に参加することになっていた。
- 「白橋容疑者は研究チームの中心にいるように見えた」と話している。
- 白橋容疑者がノバルティス社員であることを知りながら資料作成などを任せていたとみられる。
- 白橋容疑者は第三者委員会に出席したり、計画の立案段階から研究者らにアドバイスしたりしていたという。
- 白橋容疑者は2010~11年、京都府立医大の臨床試験でディオバン(一般名バルサルタン)の解析データの一部を改ざん。虚偽の数値を使った図表を大学側の研究者に提供し、海外の専門誌に虚偽の論文を掲載させた疑いが持たれている。
寄付金11億円、5大学に ノバルティス事件容疑者の研究に関与2014/6/13
欧米製薬5社、増収確保2014/6/13
- ノバルティスの高血圧症治療薬ディオバンの臨床研究を巡り、白橋伸雄容疑者がデータ解析などに関わった5大学には、2002~12年までに同社から計約11億3千万円の奨学寄付金が渡っていた。
- 研究者には製薬会社からの寄付への期待があり、製薬会社は研究成果の論文を広告に使う狙いがあるとされる。
- ある大学の医学部関係者は「今回の問題の背景には製薬会社と研究者のもたれ合いの構図がある」としている。
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